Cleveland0714’s blog

ほんとうは何かご存知ですか

「重力アルケミック」を読んで

前の記事を書いてから早いもので半月ほどが経ってしまった。この間、自分は教習所にほぼ毎日通い、2/7に入校し2/25に卒検合格、翌26日に試験場での試験に合格し、異常なスピードで普通自動車の運転免許を獲得した。

 

普通免許を取った普通な私も普通の人と同じように普通の本を読むわけであるが、今回手にした本はSFのジャンルに分類されるものであり、自分がそのような本に手を伸ばすのはかなり珍しいことであった。前に読んだSF小説はこちらの作品。

 

https://www.amazon.co.jp/Martian-Novel-Andy-Weir/dp/0553418025/ref=sr_1_1?s=english-books&ie=UTF8&qid=1551506297&sr=1-1

火星に取り残された男が様々な知恵を絞って必死に生き抜き、仲間が彼を助けに行く、という物語であった。映画化もされ、日本では「オデッセイ」という題で公開されていた。

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科学的な視点から見てもかなりリアルな書き方をされている作品であったうえ、描かれているキャラクターたちも人間味にあふれ、非常に面白い作品であった。当時、私は高校1年か2年であったが、この作品は最初に洋書で通して読み、その後日本語に翻訳されたバージョンで読み、最後に映画で見るほど好きであった。

取り残された主人公が最後まであきらめない強さ、先に帰還の途についており、火星まで彼を助けに行ったら自分たちが助かるかもわからないにもかかわらずNASA本部の指示を無視して助けに行く仲間、そんな熱い話。

とにかく面白い話だった。自分も火星に取り残されても"But I'm still alive. Surprise?"とか言える精神的強さを得たいものである。そういえば、長いことLineのトプ画はこの映画のワンシーンであった。それくらい好きな作品。ぜひ映画や本で体感していただきたい。

 

そんなわけで、熱い話が好きな私が読んだ今回の作品も非常に熱い作品であった。それがこちらの作品である。「重力アルケミック」

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あらすじ

重力を司る「重素」の発掘により膨張が止まらなくなってしまった地球。東京・大阪間はなんと約5000キロ。そんな世界がこの物語の舞台。会津若松市出身の主人公、湯川航は幼少期からの「遠くに行きたい」という思いにまかせ、東京の大学の理工学部重素工学科に入る。そこで送る無為な日々。そんな生活に変化を起こしたのは、彼のバイト先である古本屋で、ある一冊の本に出合ったことであった。空を飛ぶには重素を用いる「航空機」を利用するしかないと考えられていた世の中で、彼はその本に心を揺さぶられ、重素を用いない「飛行機」を作ろうと心に決める。無謀ともいえる彼の挑戦。馬鹿にされるようなことに果敢に挑んでいく、そんな熱い話である。

 

感想

科学、物理、発明の面白さを教えてくれる作品で、文系大学生の私でもワクワクしたまま一気読みしてしまった。

 

主人公が理系大学生という時点で、なかなか珍しい設定であるように感じる。

地球が膨張し、東京から鎌倉まで自転車で行くのに10日もかかってしまうような世界が舞台になっているが、彼らの生活自体は至って平凡。

主人公の生活も非生産的で、まさに重力に従って下降していっているようなものだった。

 

そんな生活を一変させたのがある一冊の本。彼のバイト先である古本屋の裏の書庫にしまわれていた、約100年前に書かれた『飛行機理論』という本であった。この世界では、重素を用いればどんなものでも宙に浮かんでしまうので、重素を用いない航空機である「飛行機」を本気で作ろうとする人はいなかった。

揚力を使って空を飛ぶ「飛行機」を作ることを目指し始めた湯川は、流体力学の勉強などを始め、研究室の機械を使って部品の作成などを進めていった。

 

重素を使わずに空を飛ぶ、ただそれだけの目標に向かって前進していく主人公たちの姿は私の心を大きく揺さぶった。とにかく熱い話である。

 

主な登場人物はこちら。主人公の湯川。親友の篠崎。同じ学科の宮原さん。

篠崎は「行動力と人間愛にあふれるバカ」と称される人物。彼は特殊な地形になっている富士山の探索部隊に唯一の20代の人間として参加していた。

宮原さんは、医師である両親の後を継ぐことを拒否し、将来が全く保証されていない重素工学科に入ってくるような、ある意味バカである。しかし彼女は非常に優秀で「反抗期の衝動で重素化学科に来てしまったが、このままでは人生のピークが国際数学オリンピック日本代表で終わってしまう」とかいう邪悪すぎることを平然と言えてしまうようなガチプロである。大学の卒論でも学長賞的なのをもらってしまっていた。やはり、ガチプロはカッコいいものでいつになっても憧れてしまう。

 

飛行機製作は湯川と篠崎が二人で進め、宮原さんは「無理だと思う」と言いつつも、湯川に流体力学を教えたりしている。飛行機が完成し、実際に飛ばすことになった日、宮原さんは飛行機がちゃんと飛んだ証拠を残すためにわざわざカメラを持って、見物に来て、実験の前には目を輝かせている。普通に考えたら無理だと思うようなことに果敢に挑んで(ただの夢物語ではなく)いくことはどんな人にとっても、心を動かされることなのだろうと私は思う。

 

飛行機は最終的に墜落した。つまり、一度は空を飛んでいたのだ。しかし、湯川はこの飛行機に乗っていたため、墜落により大けがを負ってしまう。けがから回復すると卒論に取り掛からなくてはならず、飛行機にかける情熱は冷めかけてしまった。湯川は院進するか、就職するか、大学生にありがちな悩みを抱える中、アメリカで飛行機開発に携わることができる可能性があることを、研究室の教授から伝えられる。

 

卒論は大学生活の集大成だ。しかし、結局ちゃんとした飛行機を作ることはできなかった。世の中にはまだまだ勉強すべきことがいっぱいある。学問の行き着く場所なんかにたどり着いていなかったということを思い知らされ、湯川は初めて飛行機製作の失敗を悔しいと感じる。

 

自分がこんなに熱い大学生活を送れるかは甚だ疑問ではあるが、とにかくワクワクが止まらない作品である。(何回言うんだ?)感情のままに書いているため、文の流れがおかしい気がしてならないが、気にしたら負けなのでこのまま書き続けよう。

 

そして、物語の終わり方も非常に希望にあふれる書き方であった。

最後の3ページあたりは、本当に好きだ。

「僕は宮原さんみたいになりたいと思ってる」出発の前日に本人にそう言うと、宮原さんは「意味が分からない」という顔をして首をかしげた。確かに自分でも意味がよく分からなくなってきたけど、でもそうなのだから仕方がない。僕は宮原さんみたいに優秀になりたいし、篠崎みたいに行動力と人間愛あふれるバカにもなりたいし、村田さんのように暴力的なまでの言語力を持つ人間にもなりたいのだった。僕は誰か別の人間になりたくて、そう思えるような人間に出会いたくて、どこまでも遠くに行きたいのだ。「私を比較対象にしなくていいくらい、立派になって帰ってくる」と、彼女は僕に平叙文で命令した。「可能な限りの努力をします」「楽しみに待ってる」 

 (p277~278より引用)

エンジンに点火した機体のように、僕は全身をぶるるんと震わせた。こうなったらどこまでも進んでやろう。人生は飛行機のようなものだ。前に進み続けない限り落下してしまう。そういう構造になっている。

 (p279より引用)

 

止まっていたら揚力は働かない。

浮き上がるためには前に進まなければならない。

重力のままに落ちて行ってしまっている大学生活。

それを変えるためには、まずは前に進まなけらば行けないのだろう。

「これは、僕が前に進む物語」なのだから。